新型コロナウィルスの影響により急速に注目を浴びるテレワーク(在宅ワーク・リモートワーク)。導入企業が増えつつある一方、緊急事態宣言解除後にはオフィスには人が戻りつつあるとも報じられています。テレワーク運用上、経営者や管理職にとって最も悩ましい項目の1つとして「コミュニケーション」が挙げられますが、果たしてどんな点に注意すればよいのでしょうか?
当方の専門はオフィス&PCデータ整理を通じた仕事効率化支援ですが、テレワーク・在宅ワークと非常に近いジャンルであり、埼玉県からの委嘱でテレワーク導入支援も行うことになりました。それに伴い多数の書籍・ニュースから情報を入手、経験者にインタビューも重ねておりますので、そこから得られた全体像とコツを、自分の経験ともからめてご紹介します。
テレワーク導入の最大のネックは「経営者」
上の本にそう書いてあり、なるほど納得!でした。
同時に、インタビューでお伺いした折の導入時最大の壁も「管理職」・・・
一般社員にとってはテレワークが歓迎されている一方、経営者・管理者にとって、勤務環境の変化を受け入れるのは実に難しいようです。
対面でしたら気軽にちょっと確認できることも、テレワークではわざわざ電話やチャット・メール等で尋ねなくてはならず、相手に対して気を遣うことへのわずらわしさ・部下が見えない不安やもどかしさがあるのも事実です。対面なら不要なはずのやりとりが発生することも少なからずあります。比較的テレワークを導入しやすいとされるIT企業ですら、担当者からは「フルリモート(テレワーク)は効率が悪い」という声をよく耳にしておりました。
一方で、優秀な労働力の確保(離職防止)や災害感染症対策、従業員を守るためには、テレワークへの備えはますます社会的に必要になります。いろいろ事例もチェックしましたが、対処策は実に千差万別で各企業にとっての最適解を求めていく必要がありそうです。この点は実に、業務効率化にも共通するポイントのように感じます。
テレワークを進めやすくするための準備3項目
1.最低限のルール(セキュリティ等)を事前に伝えておく
セキュリティ確保のため、最低限従業員に伝えておきたいルールを配布資料・研修を通じて極力事前に知らせておきます。セキュリティ面での意外な抜け穴は「置き忘れ」や「書類」。持ち出し・印刷NGの書類は何か、作業をして良い場所に制約を設けるか、などを検討して情報共有しましょう。
2.ホウレンソウのルール化(進捗の報告方法を決めておく)
テレワークで一番トラブルになりやすいのが「業務進捗の見える化(共有方法)」です。部下はまぁ1週間に1回で良いだろう・・・と考えていても、その頻度では遅れやミスを見逃し、納期に間に合わなくなるトラブルも生じうるでしょう。とはいえ、上司から1時間に1回とか報告を求められても息苦しく、余計な手間も増しますよね。
企業様から多く伺うのは、進捗の頻度や方法・タイミングをルール化する方法です。
例1)始業時に「今日のタスク」をメールやチャットで上司に報告。終業時に今日の日報・成果を画面キャプチャとともに上司に送る。
例2)月曜日の始業時15分ほどは「定例ミーティング」を実施、タスク進捗状況を各自報告する。必要に応じて週の中頃、終わりにも設定。終業時には「スケジュール管理」システムへの入力。
例3)社員2名をペアにし(先輩x後輩、正社員xパートなど)、週2回は業務量の調整・進捗について話し合う・チェックする時間を確保する。その折にちょっとしたお困りまで解決に至ったり、ちょっとしたメンタルケアができることも少なくない。
例4)管理職からの指示電話・メールは定時内のみにする。
業務の進捗・担当の見える化に使えるソフトやサービスも、必要に応じて活用すると良いでしょう。
Backlog(エンジニアの世界では常識レベルに浸透。他業種でも使えそう)
Kintone(フォーマットなどを自社向けにカスタマイズ可能)
3.ジョブ型、自律型への移行を促す
従業員にもテレワーク上の心構えを事前に伝えておき、業務時間の「長さ」ではなく「成果」が肝心であること、作業効率を意識するなどのマインドセットをくりかえし促していきましょう。
例えば
・自分から進捗を定期的に報告する
・遅延や懸念事項・トラブルがあればすぐに報告を
・急ぎ対応の可能性があるなら、事前に予告や根回しをしておく
・メールが長くなりそうなら電話やビデオ会議を相談
・出社している社員への配慮
・オーバーキャパ、残業が必要に感じたら早めに相談を
など。こちらの本は主に従業員向けの心構えが書かれた1冊で、悩んでいる部下に紹介してもよいかも。とても参考になります。
テレワーク運用後のPDCA
チーム内の関係性を深める「場」が必要
フルリモート(完全テレワーク)勤務を許可している企業でも、最初の1-2か月は出社を求める企業が大半です。チーム内での人間関係を円滑にすることこそ、スムーズな業務遂行に直結するという認識の現れといえるでしょう。
ビデオ会議上でもチャット上でも構わないので、ちょっとした雑談を歓迎する雰囲気づくりを意識的に行いましょう。たとえばビデオ会議開始時にアイスブレイク(場の緊張をやわらげるワークや問いかけ)を行う手もありますね。
出社組と在宅組のコミュニケーションギャップの埋めかた
全員が均一にテレワークが実施できていれば良いのですが、業務上どうしても出社多めになる方がいるなど、まだらな状況になるケースも少なからずあるようです。出社している社員はどうしても郵便物発送などのちょっとした用事を頼まれやすくなるため、なんだかな・・・とモヤモヤしてしまうこともあるでしょう。
そんな気持ちを少しでも和らげるには、互いの立場や悩みを想像しながらやりとりしたいもの。テレワーク導入企業での管理職の方から、出社している上司から敢えて「今朝会社の前に◎◎が落ちていたよ~」など会社ネタの雑談の口火を切ってもらうようお願いしていた、との知恵を伺いました。
出社組に何か頼む折には、用件をなるべくまとめる・感謝の一言を必ず添える、などを心がけましょう。その分自分が出社する折には、用事を快く引き受けたいものです。
メンタルケアの必要性、向き不向き・・・「選べる」のが最善
新型コロナの影響で「まずテレワーク」的な雰囲気になりやすくなっていますが、テレワークにも向き不向きがあります。自宅などで独り黙々と作業をするのが全く苦にならない社員もいれば、複数人でわいわい話し合いながら仕事を進めたい社員もいるでしょう。ついビールを飲んでしまう、つい昼寝してしまって仕事が進まない社員のお話も伺ったことが。
テレワークが苦痛になるタイプに対しては離職のきっかけにもなりうるため、孤独感の緩和・悩みや情報の共有・自己管理のスキルアップなど、特にメンタルケアが必要になってきます。
災害・感染症視点から見れば、今は確かにより多くの社員がテレワークに移行するのが好ましいとされます。そして将来的には、多様な働き方・人材確保の視点からも考えたいもの。介護・育児・病気・配偶者の転勤など誰もに起こりうるライフイベントの波も考慮して、本人が希望するタイミング・希望する頻度でテレワークができる制度環境づくりが必要になるといえるでしょう。
まとめ
意外なようですが、テレワークこそ高度なコミュニケーション能力が求められるため、特に経営者・管理職にとってはやりにくさを感じることもあるでしょう。一方でテレワーク導入は時流の1つであり、コスト削減・有能な人材定着・時間の有効活用が可能な点も見逃せません。テレワークに適したコミュニケーションのコツを押さえながら社員を活かし、同時にご自身の仕事・生活も豊かにする一助にもしていきましょう。
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