何かを探したり劣化した在庫が出てきた瞬間「いずれ整理しなくては」と感じているもののすぐに忘れて、慌ただしい毎日につい後回しをくり返すことも少なからずあるのではないでしょうか? 

一方で、環境整備を後回しにすればするほど、経費がダダ洩れになってしまう事実は案外気づかれていません。
在庫、備品、人件費・・・経費削減を狙いたいなら環境整備は必須です。

この記事ではなぜ整理が必要なのか、どういった状況で経費が失われるかについて、今までの客先や受講生からのヒアリングから明らかになった内容を紹介します。改善のための最初の一歩についても触れますので最後まで読み進めてください。 

環境整備の後回しにより、実際に生じている恐ろしい代償 

見えている物や書類の山より、本当に恐ろしいのはその先の“目に見えない損失”です。 現場ではこんなことが起きています。 

書類紛失ですぐに求められている対応ができず、顧客を怒らせたコンサル事務所 

ある所長は、スタッフから「顧問契約が1件、終了になりました…」と報告を受けました。 
原因は、管理職の机周辺でたびたび書類が埋もれて顧客に関する資料が紛れ込んでしまい、問い合わせや督促があってもすぐには対応できないことが相次いだためでした。 その場しのぎの説明が多く信頼を失ってしまい、次の更新を断られたそうです。 

「ないと思って買ったら、あった」在庫トラブル 

以下は在庫周辺でよく見る光景です 

  • 使用期限切れの消耗品 
  • めったに使わない大ボトルが5本
  • 同じ商品が数か所に点在 

担当者が「足りないかも」と不安になって発注したら既にあった、別の場所や奥から出てきた、気づかぬうちに在庫の重複で棚があふれ、商品は劣化。 整理して出てきた折にはすでに廃棄対象…ということも少なくありません。 

経営者の“時給”を無駄にしていませんか? 

私がよくお伝えしていることがあります。 

経営者の時給がいちばん高い。
だからこそ、探すムダを極力なくして経営者にしかできない仕事に専念してほしい。 

にもかかわらず、 

  • 書類やデータを毎日長時間探している 
  • 見つからない備品を買いに行く
  • スタッフのミス、トラブルの火消し 

こうした“片づけ不全”に関わる雑務に、貴重な時間が削られていませんか? 

片づいていないと発生する「目に見えない損失リスト」

 現場でよく見られる損失を、カテゴリ別に整理しました。 

現場でよく見られる損失

【1】在庫・備品管理に関するムダ 
 ・二重発注・使い忘れ・劣化・期限切れで廃棄 
 ・無駄な収納グッズ(棚・什器・ファイル)の購入 
 ・書類や郵便物の積み上げで発生するムダ

【2】スペース・テナント費用のムダ 
 ・不要物が占拠 → 活用できないスペースに 
 ・ カウンセリングルームや教室として使えず機会損失 
 ・ 追加で倉庫・部屋を借りる事態に(=固定費UP)

【3】人件費・時間的コスト 
 ・探し物・処分・管理にかかる時間と人手 
 ・「あれどこ?」と聞かれる回数×人数分=積もると膨大 
 ・他人が探しても見つからず作業が滞る 

【4】トラブル・信用失墜 
 ・情報が見つからず顧客満足度ダウン 
 ・誤説明・誤処理で契約解除やクレームへ 
 ・評価資料や退職届がうっかり他人の目に → 情報漏洩リスク

【5】人間関係・職場環境の悪化・採用難 
 ・片づけない人への不満が積もる 
 ・「また雪崩れた」「こっちまで侵食している」 
 ・ 教育係が疲弊、新人がストレスで早期離職 

【6】逸失利益(本来得られたはずの利益) 
 ・経営者の集中力が削がれる 
 ・ 営業データが散逸し、成約チャンスを逃す 
 ・事業承継時に顧客情報が欠落し、引継ぎ困難 

以下、各項目の解説・実例です 。

【1】在庫・備品管理に関するムダ

・食材(賞味期限長め・乾物に特にありがち)、医療系在庫、ゴム製、販促資料やパンフレット類、ペン類などは特に要注意。あると思っていたら期限切れ・劣化などで使えなくなっていることも少なからずあります。 

・「今は整理の時間がないけど、捨てられないからとりあえずキープ」しておきたい物品を収めるためにやむを得ず購入する什器・棚・箱・ファイリンググッズは、買いすぎれば却って場所ふさぎになります。整理がすすむほど収納用品が多数余り、依頼者が驚かれることも。 

・書類や郵便物の処理漏れがあれば「返信」「支払」などの処理が滞り、再度取り寄せる手間・延滞料金などが発生します。取引先からのクレームに発展する恐れもあります。 

【2】スペース・テナント費用のムダ 

・本来は来客スペース・カウンセリングルーム・教室などになるはずの部屋にいつしか物が積まれてお客様や受講生を入れられなくなり、回転率ダウンや機会損失に繋がっている状況は少なくありません。
「開かずの間のお客様スペースを何とか使えるようにしてほしい」とのリクエストもよく頂きます。 

・置き場所に困れば「別部屋・トランクルーム・倉庫」などの保管用のスペースを新たに借りる羽目になります。
固定費が上がるうえ、物が増え続けるなら単なる一時しのぎにしかなりません。
銀座の真ん中のオフィスが書類にあふれ、所長がもう一部屋借りようとしている…という知人のボヤキを耳にして胸が痛くなりました。 

・「捨てられない・動かせない先代の遺物」が事務所やクリニック内で放置されて場所ふさぎになり、業務や動線の妨げになっていることも少なからず見かけます。倉庫の3分の1が先代の遺物で埋め尽くされているという二代目の嘆きを耳にしたこともありました。 

【3】人件費・時間的コスト

見えない損失が甚大なわりには、意外に気づかれにくい部分です。 

・ご自身が探す時間や労力はイメージしやすいですが、同僚に探させている時間には案外気づけません。物量が多い、使用頻度と定位置が合っていないケースでは、対象物が見つかるまでの探す時間+周囲の物の出し入れ・移動させるのに余計に時間がかかります。 

・管理コストは「数量ディスカウント」につられて大量に購入した在庫や印刷物など、中長期にわたって社内に置かれる販売在庫や販促備品に発生します。品質劣化防止またはスペースの関係で、保管場所を移動させホコリを払ったりするなど、メンテナンスに時間や人件費が発生することもありますし、もし品質が劣化してしまえば使えなくなります(見切り品セールで購入したものがすぐに傷んで廃棄せざるを得なくなるようなイメージ)

処分コストも要注意です。
以前処分業者から取り寄せた見積では、事務机やイス数点で35000円以上と書かれていてお客様が愕然とされたことがありました。特に2階以上から細い通路を経由して外に出す、解体しないと出せない大物がある場合には金額が上がります 

特殊処分品も高額になります。特に医療系や薬液関係など、各業種ならではの物品は扱える業者も限られます。処分そのものはもちろんのこと、搬送にも多額の費用が生じた事例があります。

意外なところではペンキ。1缶3~4000円程度(地域による)かかるため、引越・リフォーム後に念のためにと数年放置すると大変なことになりそうです。粗大ゴミや棚、新品交換を伴わない家電4品目も手配の手間や処分費がかかりますので、無料だからと安易にもらわないようにしましょう。
不要品の処分は搬出分別などでどうしても人手を要する一方、人手不足との兼ね合いもあり、今後はさらに処分費用の高騰が予想されている、と処分業者から話を聞いたことがあります。

日々発生する個人情報込の印刷物に関しても、シュレッダーをしてもらう人件費や溶解処分の費用が発生します。 

【4】トラブル・信用失墜 

冒頭での「契約終了」エピソードが該当しますが、顧客対応に必要な情報(書類・データ双方)がすぐに見つからなければ対応遅延や誤対応が発生し、契約解除やクレームまでに発展する場合があります。クレーム対応にも時間と労力を要するでしょう。 

社内でも管理職の机上に無造作に置かれた人事評価資料や退職届がうっかり部下の目に入り(情報漏洩リスク)、トラブルや若手離職の発端となった事例があります。 

【5】人間関係・職場環境の悪化 

・片づけない(特に整理整頓に協力する姿勢がない)スタッフの言動が、他のスタッフの想定外のストレスやトラブルの火種へ発展してしまうことがあります。苦手派の机上から雪崩が起きて臨席まではみ出したりするなどで

スタッフ

あの人、何とかしてください!!!!!

などと、所長や管理職にトラブルが持ち込まれます。
無関心派のちょい置きで他のスタッフが探す羽目になる、または二重発注などのトラブルが生じれば、犯人捜しで職場の雰囲気も気まずくなりかねません。


・「何度促しても社長や上司が整理どころか散らかし続け、地震発生時に物が崩れるかもと身の危険も感じたため、本気で転職先を探し始めました」と受講生からコメントを頂いたこともありました。 

・遠因ではありますが、教育係が忙しすぎるのは要注意です。書類やデータの整理ができておらず都度探しているのも一因でしたが、新人教育の時間やゆとりを確保できずに放置せざるを得なかったそうです。それがあだとなり新人が定着せず、採用活動を繰り返しているとのお困りも伺ったことがあります。 

・「綺麗なオフィスにあこがれて」を入職の理由に挙げる若手が一定数います。優秀な若手ほど自社の作業効率を気にする傾向にあります。人材獲得が困難になる中、勤務環境の乱れを放置すれば、他社との比較で若手にますます選ばれにくくなる、と言えるでしょう。 

【6】逸失利益(本来得られたはずの利益) 

・探している途中は

なかったらどうしよう・・・(涙)

こんなことしてる場合じゃないのに!!!

といった不安やという苛立ちがつのって本来の予定に着手・集中できなくなります
探し物で集中力を要する作業が中断されれば、作業に要する時間は最大で2倍以上の差が出ます(書籍「ワン・シング」より)。 

・机上に書類の山ができていた某士業オフィスでは・・・

見込客

別の士業事務所へ訪問したところ、そこの机の上に書類が山積み!
私も個人情報もあの山に埋もれるの?と怖くなってその事務所への依頼をやめました。
なので、貴事務所に相談へ伺いたいのですが。

という見込み客からの問い合わせを受けたので慌てて、この整理術のセミナーを受講しました!
と、受講動機を語ってくれた士業さんがいらっしゃいました。机上に書類の山のオフィスは新規依頼を逃したことになります。

・書類・データともに「顧客情報のどれが最新版かがわかりません」というお困りは非常に多いです。
営業データが散逸すれば、成約チャンスを逃したり誤った情報で誤った対応をしてしまうなど、無駄な出費や信頼失墜につながることも。私自身にも3-4年前の顧客情報に基づいてDMを発送した結果、約4分の1が返送されてきた痛い経験があります。 

・先代のスペースが物や書類で埋もれて中に入れず、当時の顧客情報がまるでわからない、と嘆く二代目の話を伺ったことがありました。事業承継時に既存顧客情報や技術情報が失われれば、当時の顧客との契約内容がわからず対応に支障が生じる恐れがあります。 

「整理整頓」はコスト削減の最短ルート 

整理整頓は見た目だけの問題ではなく、“業務効率・人間関係・経営判断”に直結する経営課題です。
身を置く環境は良くも悪くも、経費・時間・労力・メンタル・人間関係にまで広く影響が波及します。 

とはいえ美しく細部まで整える必要は全くありません(場所にもよりますが)。
大切なのは、「どこに何があるか、誰が見ても分かる」状態にしておくこと。 

これはチームで成果を上げるために絶対不可欠な“情報共有”にもなるのです。 

まずは“現状の見える化”から 

どこから手をつければよいかわからないときは、まず現状の「見える化」からはじめます。
まずは社内で合意を得てから、下記を話し合いましょう。 

「見える化」のコツ

  • 困っていること、よく探しているものなど課題、改善すべきエリアを細かく洗い出す 
  • 改善のための手順を細かく洗い出す
  • 作業内容、優先順位、担当者、改善作業スケジュールの決定
  • 維持作業の頻度 

各自の机周りや作業スペースも、共有スペースも、なるべく流入量を減らしながらこまめに処分を進めるのが良いでしょう。 

在庫や備品に関しては、いったんまとまった時間を確保して選別分類を行い「どこに何が何個あるのか、誰が見てもわかる」状態に整えます。詳細はこちらの記事を参照してください。 

適正数を維持して手間かけない!小さなクリニック・店舗向けアナログ在庫管理導入ステップ14

先日在庫管理改善の提案書を作成していたとき、最低限やるべき作業のフローチャートを作成したら検討すべき項目の多さに改めて驚…

また、整理整頓では社内から反対の声が出ることもあります。
他人に協力を促すコツに関しては以下の記事も併せてご確認ください。 

職場での整理整頓(5S):周囲に協力してもらいやすくなる方法

少し前に安城商工会議所様にて「机周りスッキリ改革講座」を担当させて頂きました。 会員さん向け講座でしたが、組織で働かれて…

どこから何から始めるべきか、具体的な作業手順がわからない、自社だけではなかなか進まない場合には、必要に応じてプロの視点や人手を借りるのも有効です。

毎月発生するテナント代や人件費を大きく削減したいなら、物を(データも)大幅に移動させなくてはなりません。
プロは作業手順や定位置・収納選定を試行錯誤するあなたの時間や労力を肩代わりし、多数の事例から貴社にぴったりな仕組みづくりを行います。また、経営者がスタッフに直接改善点を指摘するよりも第三者から一般論で伝えたほうが、スタッフが意見を受け入れやすく高い効果を得られることも多いです。

その結果、経営者は自身の時間や費用を本来やりたいことに投資することができます。従業員の時短や満足度アップにもつながりますから、未来の節約や時短ともいえるでしょう。 

整理はいつでも誰でもノーリスクで始められます。 
でも後回しにすればするほど、見えるムダも見えないムダも雪だるま式に膨らむのです。 

今回の気づきが、あなたや貴社での現場改善のきっかけになりますように。 

今日もここまでお読みくださりありがとうございます。

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